序章:その転職、本当に「成功」しますか?僕が20代で経験したリアルな失敗
「このままでは壊れてしまう」。
かつての僕の心の中は、この一言に尽きました。2020年4月に新卒で大手重機メーカーに入社し、待っていたのは終わりなき残業とプレッシャーの日々。心身ともに限界を感じ、「ここから抜け出せれば、きっと楽になれる」と信じて転職を決意しました。
そして2024年、誰もが知る大手企業への転職に成功。当時は「これでつらい日々から解放される」と本気で思っていました。
でも、結論から言うと、その転職は失敗でした。
この記事では、僕がなぜそう感じたのか、そしてこの手痛い失敗から何を学び、どうやって新たな道を見つけたのかを、すべて正直にお話しします。
これは、単なる一個人の失敗談ではありません。僕の経験は、転職という選択肢を前にした多くの20代が陥りがちで、そしてその先にある「本当の解決策」を浮き彫りにするものです。
転職は、人生を好転させるためのゴールではなく、あくまで働き方を変えるための一つの手段にすぎません。そして、その手段の選び方や使い方を間違えると、僕のように同じ苦しみを、違う場所で繰り返すことになってしまいます。
もし今、あなたがかつての僕と同じように「今の会社から逃げ出したい」と強く願っているなら、この記事を読んでみてください。僕の失敗が、あなたの転職活動を「成功」へと導き、さらには会社という存在に依存しない、より自由でたくましい生き方を見つけるための、一つのきっかけになることを願っています。
第一部:終わらない残業地獄 ― 僕が転職を決意し、そして失敗するまで
僕の社会人生活は、まさに「疲労の連鎖」でした。最初の会社での絶望が、次の会社での失望へとつながっていく。そのリアルな過程をお話しします。
2.1 新卒で入社した会社の現実:月100時間超の残業と精神的プレッシャー
僕が新卒で入社したのは、重機販売の営業職。お客様は百戦錬磨の土建屋さんたちで、仕事の厳しさはもちろん、常に精神的なプレッシャーを感じる毎日でした。
しかし、何よりもつらかったのは、終わりの見えない長時間労働です。入社してしばらくすると、同じ営業所のメンバーが2人、立て続けに現場を離れました。1人はメンタルを病んで休職、もう1人は退職。その瞬間から、彼らの業務がすべて僕の肩にのしかかってきました。
気づけば、月の残業時間は100時間を超えるのが当たり前。毎晩、社用車のハンドルを握りながら帰路につく頃には、日付が変わっていることがほとんどでした。深夜1時、2時の静まり返った道を走りながら、「何のために働いているんだろう」という虚無感に襲われる日々。
「この働き方は、明らかにおかしい」。そう確信したのは、大学時代の友人たちと自分の生活を比べた時です。彼らは当たり前のように定時で帰り、趣味や自己投資に時間を使っていた。それに比べて僕は、満足な睡眠時間すら確保できず、ただただ疲弊していくだけ。仕事が原因で心身に不調が生じているのは明らかでした。
このままでは、本当に壊れてしまう。その強い危機感が、僕を転職へと突き動かしました。
2.2 「大手なら大丈夫」という甘い期待:焦りが招いた情報収集の不足
とにかく、一刻も早くこの状況から抜け出したかった。
その一心で始めた転職活動。当時の僕の頭の中には、「大手企業なら大丈夫だろう」という、今思えばあまりにも甘い期待がありました。社会的な知名度があり、世間からの目も厳しい大企業なら、労働環境もクリーンなはずだと信じ込んでいたのです。
これは転職に失敗する20代が陥りやすいことなのかなと思います。焦りの中で進める転職活動は、冷静な判断力を奪います。内定をもらった会社の中から早く決めなければというプレッシャーで、僕は本質的な部分を見ようとしませんでした。
その象徴が、面接での一幕です。転職エージェントから「面接では、あまりマイナスな印象を与える質問はしない方がいい」というアドバイスを鵜呑みにしていた僕は、最も重要な残業について、深く切り込むことを避けてしまいました。
僕:「残業時間は、月平均でどれくらいでしょうか?」
面接官:「うーん、時期によりますね」
この曖昧な答え。本来であれば、「具体的には、繁忙期はどれくらいで、通常期はどれくらいですか?」「部署の皆さんは、平均して何時ごろに退社されていますか?」と、さらに踏み込んで確認すべきでした。しかし、当時の僕は「まぁ、今の会社よりはマシだろう」と、自分に都合よく解釈してしまったのです。
これは、転職先のリサーチ不足が失敗の大きな原因になるという典型的な例です。僕は、早くこの苦しみから逃れたいという気持ちが強すぎるあまり、自ら真実から目をそらしてしまいました。
2.3 転職という名の「場所移動」:結局、何も変わらなかった労働環境
そして、僕は誰もが知るその大手企業に転職しました。
入社当初は、確かに少しだけ楽になったと感じました。しかし、その安堵感は長くは続きませんでした。研修期間が終わり、本格的に業務が始まると、状況は一変します。
気づけば、僕はまたしても毎日夜10時頃までオフィスにいる生活に戻っていました。
「またか…」
正直、心が折れそうでした。業務量は膨大で、慣れないことばかり。そして何より衝撃だったのは、部署のメンバー全員が同じように遅くまで働いており、それが「当たり前」の文化として根付いていたことです。
会社の名前や規模がどうであれ、働く部署や仕事内容によっては、結局は長時間労働から抜け出せない。この現実は、僕が抱いていた「大手なら安心」という幻想を、容赦なく打ち砕きました。大企業といえども、部署や職種によって働き方は大きく異なり、プロジェクトの状況次第では残業が急増することは珍しくありません。
僕がしたのは、本当の意味での「転職」ではなく、ただ働く場所を変えただけの「場所移動」に過ぎなかったのです。問題の根本は何も解決していませんでした。
第二部:なぜ20代の転職は失敗しやすいのか?データで見る7つの落とし穴
僕の失敗談を読んで、「自分は大丈夫」と思われた方もいるかもしれません。しかし、僕の経験は決して特別なものではないのです。色々調べてみると、多くの20代が同じような落とし穴にはまり、転職を後悔している現実が浮かび上がってきます。
ここでは、僕自身の反省も踏まえ、20代の転職が失敗に終わりやすい7つの代表的な原因を、客観的なデータと共に徹底解剖します。
3.1 落とし穴1:「逃げ」の転職 ― 目的が「辞めること」になっている
転職失敗の最大の原因は、転職の目的が「今の会社を辞めること」そのものになってしまうことです。僕がまさにそうでした。「月100時間の残業」という強烈な不満から逃れることだけを考えていたため、次の会社に求めるポジティブな条件を深く考える余裕がありませんでした。
このような「逃げ」の転職は、どんな求人を見ても「今の会社よりはマシだろう」という低い基準で判断してしまいがちです。その結果、一番早く内定が出た会社に安易に飛びついてしまい、入社後に「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースが後を絶ちません。
3.2 落とし穴2:自己分析の不足 ― 「何を避けたいか」は分かっても「何がしたいか」が不明確
「残業は嫌だ」「人間関係が悪い職場は避けたい」
このように「避けたいこと」は明確でも、「本当にやりたい仕事は何か」「どんな働き方を実現したいのか」といったポジティブなビジョンが描けていない20代は非常に多いです。
自己分析が不十分だと、自分自身のキャリアの軸が定まりません。軸がなければ、どの企業が自分に合っているのかを判断する基準がなく、ただ漠然と求人情報を眺めるだけになってしまいます。結果として、またしても自分に合わない環境を選んでしまい、転職を繰り返す負のループに陥る危険性が高まります。
3.3 落とし穴3:企業研究の甘さ ― 求人票の裏側と「部署ガチャ」の現実
20代の転職失敗理由として常に上位に挙がるのが、「転職先のリサーチ不足」です。多くの人が、企業の公式ウェブサイトや求人票に書かれた美辞麗句を鵜呑みにしてしまいます。しかし、そこに書かれているのは、あくまで企業の「理想の姿」です。
実際の労働環境は、配属される部署の文化や上司の考え方によって大きく左右されます。いわゆる「部署ガチャ」です。僕が転職した大手企業も、全社的な平均残業時間は決して高くなかったかもしれません。しかし、僕が配属された部署は、社内でも有名な激務部署でした。このような内部情報は、表面的な企業研究だけでは決して見えてきません。
3.4 落とし穴4:面接での確認不足 ― 「残業は時期によります」は危険信号
僕が面接で曖昧な答えをスルーしてしまったように、多くの転職者が面接の場で本当に聞くべきことを聞けていません。「嫌われたくない」「ネガティブな印象を与えたくない」という気持ちが、重要な質問をためらわせてしまうのです。
しかし、面接は企業が候補者を選ぶだけの場ではありません。候補者が企業を見極めるための、非常に重要な機会です。残業時間、休日出勤の有無、評価制度、社員の離職率といった、働きやすさに直結する項目について、具体的な質問をせずに「大丈夫だろう」と判断するのは極めて危険です。曖昧な回答は、何か隠したいことがあるサインかもしれません。
3.5 落とし穴5:「大手神話」への過信 ― 企業のブランドイメージと実態の乖離
「大手だから」「有名だから」という理由は、転職先を選ぶ上で最も危険な判断基準の一つです。僕自身がこの「大手神話」の罠にはまりました。
確かに、大手企業は福利厚生が充実していたり、社会的信用が高かったりするメリットはあります。しかし、それが働きやすい環境を保証するものでは全くありません。むしろ、組織が巨大な分、部署ごとの文化の差が激しく、一度配属されると異動が難しいケースも多々あります。企業のネームバリューという「看板」に惑わされず、その内側で働く「生身の人間」の環境をこそ、見るべきなのです。
3.6 落とし穴6:焦りと妥協 ― 在職中の転職活動を怠るリスク
「もう限界だ」と感じて、次の転職先を決めずに退職してしまう人がいます。しかし、これは最悪の選択肢の一つです。
退職してしまうと、収入が途絶えるため、経済的なプレッシャーが日に日に増していきます。この焦りが、「どこでもいいから早く決めたい」という妥協を生み、冷静な企業選びを妨げます。結局、不本意な条件の会社に入社してしまい、再び転職を考えることになるのです。
どんなに今の職場がつらくても、内定を得るまでは絶対に退職しない。これが、失敗しない転職活動の大原則です。
3.7 落とし穴7:キャリアプランの欠如 ― 目先の環境改善に囚われ、長期的な視点がない
20代、特に第二新卒の転職では、「30代以降、自分はどんな専門性を持ち、どうなっていたいのか」という長期的なキャリアプランが欠如していることが多いです。
目先の「残業を減らしたい」という不満解消にばかり目が行き、その転職が将来のキャリアアップにつながるのか、必要なスキルが身につくのか、という視点が抜け落ちてしまうのです 18。たとえ労働時間が短くなったとしても、スキルが身につかない楽な仕事を選んでしまうと、数年後に再び転職市場に出たとき、自分の市場価値の低さに愕然とすることになります。
これら7つの落とし穴は、独立した問題ではありません。キャリアプランの欠如が自己分析不足を招き、それが「逃げ」の転職につながり、焦りが企業研究の甘さを生む…というように、すべてが連鎖しています。この構造を理解することが、失敗の連鎖を断ち切るための第一歩となるのです。
第三部:二度と後悔しないために。転職を「成功」に導く5つの鉄則
僕の失敗と、多くの20代が陥る落とし穴を分析した結果、転職を「後悔」で終わらせないための、明確な方法論が見えてきました。それは、感情的な「逃げ」ではなく、戦略的な「選択」として転職を捉え直すことです。
ここでは、僕が「あの時に知っておきたかった」と心から思う、転職を成功に導くための5つの鉄則を具体的にお伝えします。
鉄則1:徹底的な自己分析で「譲れない軸」を言語化する
転職活動を始める前に、まずやるべきことは求人サイトを見ることではありません。自分自身と向き合い、「働く上で絶対に譲れない条件は何か」を言語化することです。
「強み・弱み」といった漠然としたものではなく、もっと具体的に、自分の価値観を掘り下げます。例えば、以下のような問いを自分に投げかけてみてください。
- 働きがい: どんな瞬間に「この仕事をしていて良かった」と感じるか?
- 環境: どんな人間関係、職場環境なら心地よく働けるか?
- 時間: プライベートとのバランスをどう取りたいか?残業は月何時間までなら許容できるか?
- お金: 最低限必要な年収はいくらか?それ以上に何を求めるか?
- 成長: 3年後、5年後、どんなスキルを身につけていたいか?
これらの答えを書き出し、優先順位をつけます。「給料は多少下がってもいいから、とにかく定時で帰れる環境が最優先」なのか、「スキルアップのためなら、一時的な激務も厭わない」のか。この「譲れない軸」が、無数の求人情報の中から、あなたにとって本当に価値のある一社を見つけ出すための羅針盤になります。
鉄則2:企業研究は「口コミサイト」と「社員のSNS」まで深掘りする
企業の公式情報だけを信じるのは、あまりにも危険です。本当に知りたいのは、そこで働く人々の「本音」です。
- 企業の口コミサイト: OpenWorkやVorkersといったサイトには、現役社員や元社員によるリアルな評価が投稿されています。「残業時間」「有給消化率」「組織体制」「企業文化」など、求人票には書かれない内部情報が満載です。特に、退職者のコメントには、その企業の根本的な問題点が表れていることが多いので必見です。
- 社員のSNS: LinkedInやX(旧Twitter)などで、興味のある企業名で検索し、そこで働く社員を探してみましょう。彼らがどんな発信をしているか、仕事に対してどんなスタンスかを見ることで、会社の雰囲気やカルチャーを垣間見ることができます。
これらのツールを使って、企業の「光」の部分だけでなく、「影」の部分まで徹底的にリサーチすることが、入社後のギャップを防ぐための最も有効な手段です。
鉄則3:面接は「質問の場」と心得る ― 残業・評価制度・離職率の聞き方
面接は、自分をアピールする場であると同時に、企業を「面接」する場でもあります。臆することなく、気になる点はすべて質問し、解消しましょう。ただし、聞き方には工夫が必要です。ネガティブな印象を与えずに、本質的な情報を引き出すための質問例をいくつかご紹介します。
- 残業について:
- NG: 「残業は多いですか?」
- OK: 「チームの皆さまは、普段は何時ごろに退社されることが多いでしょうか?」「1年で最も忙しい時期はいつ頃で、その際の残業時間はどれくらいになりますか?」
- 評価制度について:
- NG: 「給料は上がりますか?」
- OK: 「どのような成果を上げると、評価に繋がりやすいでしょうか?評価制度について、具体的に教えていただけますか?」
- 離職率・人の入れ替わりについて:
- NG: 「辞める人は多いですか?」
- OK: 「配属予定の部署には、中途入社の方はどのくらいの割合でいらっしゃいますか?」「皆さまの平均的な勤続年数はどれくらいでしょうか?」
これらの質問に対する答えの具体性や、面接官の反応を見ることで、その企業がどれだけ誠実に社員と向き合っているかを推し量ることができます。
鉄則4:複数の内定を比較検討し、冷静に判断する
焦って最初に内定が出た一社に飛びついてしまうのは、失敗の典型的なパターンです。理想は、複数の企業から内定を獲得し、それらを冷静に比較検討できる状況を作ることです。
複数の選択肢を持つことで、精神的な余裕が生まれます。一つの内定に固執する必要がなくなるため、「鉄則1」で定めた自分の「譲れない軸」に照らし合わせて、最も自分に合った企業はどこかを客観的に判断できます。給与、勤務地、業務内容、社風など、様々な要素をテーブルに並べ、総合的に評価しましょう。
鉄則5:転職エージェントを「パートナー」として使いこなす
転職エージェントは非常に心強い味方ですが、彼らを「丸投げ先」にしてはいけません。彼らは転職のプロですが、あなたの人生のプロではありません。また、彼らのビジネスは、あなたを企業に入社させて初めて成立するという構造も理解しておく必要があります。
エージェントを最大限に活用するコツは、彼らを「情報収集と交渉のパートナー」と位置づけることです。
- 主導権を握る: 「鉄則1」で明確にした自分の軸をエージェントに伝え、それに合わない求人は紹介しないようにはっきりと要求します。
- 内部情報を引き出す: エージェントは、一般には公開されていない企業の内部情報(部署の雰囲気、過去の入社者の傾向など)を持っている場合があります。積極的に質問し、情報を引き出しましょう。
- 最終判断は自分で行う: エージェントに勧められたからという理由で決めるのではなく、すべての情報を自分で吟味し、最終的な決断は自分自身で行うことが重要です 19。
これらの鉄則をまとめた、具体的なチェックリストを作成しました。ぜひ、ご自身の転職活動に役立ててください。
陥りがちな失敗 (Common Pitfall) | 今すぐできる対策 (Actionable Countermeasure) |
「辞めたい」という気持ちが先行してしまう | 転職の目的を「〇〇を実現するため」とポジティブな言葉で3つ書き出す |
自分の強みややりたいことが分からない | これまでの仕事で「楽しかったこと」「苦痛だったこと」をそれぞれ10個ずつ書き出し、共通点を探す |
求人票や企業のウェブサイトしか見ていない | 口コミサイトで、特に「退職検討理由」の項目を最低10件は読み込む |
面接で残業や待遇について聞くのが怖い | 聞きたい質問リストを作成し、「~について教えていただけますか?」という丁寧な聞き方に変換しておく |
「大手だから」という理由で安心してしまう | 企業の平均残業時間ではなく、配属可能性のある部署の働き方について、口コミやエージェント経由で調べる |
内定が出ない焦りから妥協しそうになる | 転職活動の期限を決め、それまでは絶対に今の会社を辞めないと心に誓う |
目先の労働環境改善しか考えていない | 5年後、10年後の理想の自分を想像し、今回の転職がそのステップとして適切か自問する |
第四部:僕が転職失敗から見つけた、給料に依存しない「新しい生き方」
二度目の転職も、結局は長時間労働という同じ問題に直面したとき、僕は根本的な事実に気づきました。
それは、「会社を移るだけでは、本質的な問題は解決しない」ということ。
問題は、A社やB社という個別の会社にあるのではありませんでした。僕の人生の安定と幸福を、「会社からの給料」という、たった一つの収入源に完全に依存してしまっていること。それこそが、僕を苦しめる根本的な原因だったのです。
5.1 根本的な問題:「会社」というシステムに依存するリスク
どんなに優良な企業でも、未来は不確実です。業績が悪化するかもしれない。事業方針が変わるかもしれない。気の合わない上司が来るかもしれない。その時、給料という命綱を会社に握られている僕たちは、理不尽な要求や過酷な労働環境を受け入れざるを得なくなることがあります。
「会社を辞めたら生きていけない」という恐怖が、僕たちから「嫌だ」と言う自由を奪うのです。
この構造に気づいたとき、僕はもう会社の給料だけに頼る働き方をやめようと決心しました。転職という「一時しのぎ」ではなく、もっと根本的なセーフティネットを、自分自身の手で作り上げることにしたのです。
5.2 収入源を分散させるという選択肢:インデックス投資と高配当株投資
僕がまず始めたのは、会社の給料を「増やす」ことではなく、給料以外の「別の収入源を作る」ことでした。具体的には、証券口座を開設し、少額から投資を始めました。
- インデックス投資: 日経平均やS&P500といった市場全体の値動きに連動する投資信託を、毎月コツコツと積み立てていく方法です。専門的な知識がなくても始めやすく、長期的に世界経済の成長の恩恵を受けることを目指します。これは、将来のための資産形成の土台です。
- 高配当株投資: 安定して高い配当金を出す企業の株を買い、定期的にお金(配当金)を生み出してもらう仕組みです。これは、日々の生活を支える第二のキャッシュフローとなります。
もちろん、投資にはリスクが伴いますし、すぐに大きな収入になるわけではありません。しかし、たとえ月に数千円でも、給料以外の収入があるという事実は、「いざとなれば、会社を辞めても何とかなるかもしれない」という、絶大な精神的な安定をもたらしてくれました。
5.3 このブログもその一歩:経験を発信することの価値
そして、このブログを書いていること自体も、僕にとっての新しい生き方への挑戦です。
自分の身に起きた「転職の失敗」というネガティブな経験。しかし、この経験を客観的に分析し、誰かの役に立つ情報として発信することで、それは「価値」に変わります。
この記事を読んで、「自分も同じだ」と共感してくれたり、「この失敗を避けよう」と考えてくれたりする人が一人でもいれば、僕の失敗は決して無駄ではなかったと思えます。そして、この活動が将来的にもう一つの収入の柱になれば、僕はさらに会社への依存度を下げ、より自由に働き方を選択できるようになるはずです。
5.4 転職は「人生を変える魔法」ではない
この経験を通して、僕の転職に対する考え方は180度変わりました。
転職は、人生を一発逆転させる魔法の杖ではありません。それは、自分のキャリアをより良い方向に導くための、数あるツールの一つに過ぎないのです。
本当のゴールは、「完璧な会社」を見つけることではありません。どんな状況になっても自分と家族を守れるだけの、経済的・精神的な基盤を築き、会社に「NO」と言える選択肢を持つこと。それこそが、僕たちを本当の意味で自由にしてくれるのだと、僕は信じています。
まとめ:転職の失敗は、人生の終わりじゃない
新卒で入社した会社の残業地獄から逃げ出し、大手企業に転職すればすべてが解決すると信じていた僕。しかし、そこで待っていたのは、形を変えただけの同じ現実でした。
この転職の失敗は、僕に大きな後悔と無力感を与えました。
しかし今なら、はっきりと分かります。あの失敗があったからこそ、僕は「会社に依存する」という生き方の危うさに気づき、自分自身の力で未来を切り拓くという、新しい道を見つけることができたのです。
転職は、万能薬ではありません。もしあなたが今、過去の僕と同じように苦しんでいるのなら、どうか「会社を変える」ことだけをゴールにしないでください。
まずは、自分自身と向き合い、どんな人生を送りたいのかを考える。そして、その実現のために、転職というツールを戦略的に使う。同時に、給料だけに頼らない、複数の収入の柱を作る努力を始める。
その小さな一歩の積み重ねが、あなたを本当の意味での「自由」へと導いてくれるはずです。
僕の失敗談が、あなたの未来を少しでも明るく照らすきっかけになれば、これ以上嬉しいことはありません。あなたの今の苦しい経験も、いつか必ず、あなた自身を、そして誰かを救う力になります。
コメント